穴の底

夜の帳が落ちる森深くの、色褪せた石段に腰掛けて、

わたしは己が昼を、燃やそうとした

 

淡い月はあまりにも遠く、身を撫でる風はあまりにも心許ない

闇を包む葉葉の輪郭が、さらさらと、痛みを奏でている

 

春の夜は、

ぞっとするほどに暖かく、心地よく、清廉で、微かに黴の味がした

大地に穿たれた、陰る穴の底に、わたしは灰色の祈りを止めない

その奥で安穏の眠りについているのは、

歯切れの良すぎる嘘と、口触りの良すぎる真実に挟まれて、

目を瞑って俯くしかなかった、昼のわたし

 

夜の帳が落ちる森深くの、色褪せた石段に腰掛けて、

わたしは己が昼を、燃やそうとした

 

叶わないと、わかっているのに

黎明の遥かに遠い今でさえも

その祈念は届かない、とささやく影は、常にわたしの隣にいるのに

 

わたしは、あの暗い穴の底に向けて、

言葉なき祈りを、昼への怒りと弔いの唄を、唱えつづけている

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