2016/07/23 メッセージ返信

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>えちか さん
メッセージ、いつもありがとうございます。

いまの自分にできる、最適な表現を探しています。
書いたり作るのはちょっとした性分で、何らかのかたちにまとまったら、また公開する予定です。いつか読んでやってください。
それでは。

[Lacerated words] 輸血

血中濃度、至って正常、心拍数、変わらず平常

でも輸血の悪夢がやまないでいる

 

右手の亡霊がささやいた

このままではいけないと

左手の妖精がひとりごと

明日も今日と同じだよと

 

いま、揺らめく常温は

誰かを、救っていますか

さて、普段通りを終える

日々は、がなり立てやまない

 

実は、知ってるんだ

このあらゆるノイズたちは

すべてが、ぼくの映し画なのだと

毎日、そしていつしか、 曖昧な夢と希望を、狂った抱き枕に変えた

相応の報いなんだって

 

ああ、またたく地下鉄のホームは

沈黙を貫くばかりで

ああ、ぼくのゆく道の果て

待つのはたぶん曖昧な死だけだ

2016-05-31 メッセージ返信

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>finalbeta さん
>「塔とルカとウトと塔」プレイさせていただきました。面白かったです!2周しました。2周目で冒頭の意味がわかってニヤリとしました。

2周も読んでくださり、ありがとうございます。
繰り返して読むと、同じ表現の意味が読み手の中で書き換わる、といったやり方が好きでして、しばしば気が抜くと導入してしまっています。「惑星開発姉弟」なども(ひどいくらいに)そうですね。
文章という媒体はとても「脆い」ので、こういうことに向いているのかな、と思います。

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『塔とルカとウトと塔』

【あらすじ】

登頂者の何もかもを叶えるという『塔』を捜す、過酷な旅。

幾千もの戦いと死を乗り越えて、

ついに生き残ったのは、ルカと託宣の少女・ウトのふたりだけだった。

ショート・ファンタジー。


【主な登場人物】

ルカ – 旅の集団『塔への集い』の一員。華がないと自認している。
ウト – 『塔への集い』の一員。託宣の少女。『塔』への導き手。

想定プレイ時間:10分前後。

「続きを読む」より、ブラウザ版をプレイできます。

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[凍結中]『この霧の中で、あなたを見失うのであれば、わたしは、』

――ふたりの優しい生活、あるいは、哀れなひとりあそび。

『この霧の中で、あなたを見失うのであれば、わたしは、』 


【あらすじ】

ある秋。

大都市『駅街』。

廃墟ガベッジ・パイルに暮らす画家崩れの女クエンタ・ローズマリィは、記憶のない美貌の少女型人形を介抱し、エヌヴィと名付ける。
「わたしがあなたを補修してあげる。その代わりに、あなたはわたしと一緒に暮らして、画を描いてもらうわ」
灰色と静寂の廃墟街ではじまった、女と人形の奇妙な共同生活。
ふたりを繋ぐ楔は、絵具とグラフィティとスキャニングとナトリウム溶液だ。

筆を取るエヌヴィが微笑むと、クエンタも釣られるようにして笑ってしまう。

――まるで、その果てに待ち受ける、残酷な真実から、目を逸らすように。


2016年6月現在、執筆中です。

・若干の、女性の同性愛に近い描写と、暴力的な表現が含まれます。

穴の底

夜の帳が落ちる森深くの、色褪せた石段に腰掛けて、

わたしは己が昼を、燃やそうとした

 

淡い月はあまりにも遠く、身を撫でる風はあまりにも心許ない

闇を包む葉葉の輪郭が、さらさらと、痛みを奏でている

 

春の夜は、

ぞっとするほどに暖かく、心地よく、清廉で、微かに黴の味がした

大地に穿たれた、陰る穴の底に、わたしは灰色の祈りを止めない

その奥で安穏の眠りについているのは、

歯切れの良すぎる嘘と、口触りの良すぎる真実に挟まれて、

目を瞑って俯くしかなかった、昼のわたし

 

夜の帳が落ちる森深くの、色褪せた石段に腰掛けて、

わたしは己が昼を、燃やそうとした

 

叶わないと、わかっているのに

黎明の遥かに遠い今でさえも

その祈念は届かない、とささやく影は、常にわたしの隣にいるのに

 

わたしは、あの暗い穴の底に向けて、

言葉なき祈りを、昼への怒りと弔いの唄を、唱えつづけている

夜道

どこまでも続く夜道の隅に、わたしはわたしの屍骸を見とめた

 

待宵の月が、何かを知り得る筈もあるまい

ドライブ

馬のない馬車のヘッドライトの点灯が、なぜか憎くて

曖昧な街灯と脆弱な街路樹たちが、なぜか許せなくて

闇と静寂の道々で、わたしは、わたしと踊っていたのだと思う

ありふれた夢想、その残骸たちの転がる海の舞台上で

わたしたちは、欺瞞の笑顔を突き合わせて、いつまでも愉しく踊った

 

どこでもないような山奥の崖下に、わたしはわたしの屍骸を棄てた

ボンネットに体重を載せて、果てしない吐息を残して、闇夜の道を戻った

ヘッドライトが照らし出す、曖昧な街灯と脆弱な街路樹たち

ふと、あの手の感触が、脳裏に蘇る

わたしが棄てたものには、わたしよりも暖かな体温があった

 

あの夜の、穢れた森のささやきは、

絶えることなく、今もこの耳に残響している

銀の砂浜にて

――すべては歯車と熱の問題だ。エントロピー法則か、あるいはもっと単純なこと

淡いパステルカラーの水面が、間違いのように、どこまでも続く海

そのまんなかの、この小さな島にいるのは、ぼくときみのふたりだけ

ふと見上げれば、そこには涼やかな黄昏の空がある

紅い太陽が東の地平線に沈もうとしているかたわらで、砕けた月は不満足そうに西の宙に漂っていたっけ

 

銀の砂浜の上で、ひとしきり遊びまわったぼくらの頬に、

夕焼け色の風が、優しく、ひとなで

砂の大地のかすかな輝きの波が、ぼくらを包み込むようで、

磯の香りが、なぜかとても甘ったるくて、

ぼくは、きみに、振り返る

 

――すべては歯車と熱の問題だ。ネルンスト定理に、ぼくらは還れないということ

きみは、銀の砂浜に、じっと座りつづけている

その背に向けて、ぼくは声を上げた

無意味だって、もう知っていたのに

 

そろそろ、夜がやってくる時間だ

冷徹で残虐で暴力的な、白い雨の降る、夜が

 

ぼくは、小さな溜息をつくと、

もう二度と、二度と動かないでいる、きみの隣に座って、

ただ、そっと、体を寄せた

眠り姫

麗しの眠り姫は、擬似ガラスのカプセルに囚われて

紅い生体補整スープの中に背を丸め、睫毛の際立つ眼を優しげに瞑っている

面持ちは安らかなる夢想のさなか、しかしほんの少しだけ退屈そうだ

 

忘れ去られた暗闇の廃墟に、維持カプセルは黙々とその役割を続け

だが彼女を液中に繋ぎ留めた魔法使いの影は、既にこの世にない

 

施設外壁に至るまでの防護システムの総数は、姫を守護する衛兵の数

血管と神経に繋がれた細い細い糸の本数は、哀れな王の愛と憂いの数

ふと、水晶より放たれ彼女を取り囲むは、色とりどりのレーザーライト

六十六分毎の精査が、人知れず始まり、人知れず終わってゆく

 

暗闇が戻る

姫は、やはり眠り続けている

しかし、わたしたちだけは知っている

彼女はまどろみの中で、三年に一度ほどの頻度で、小さな寝返りをうつのだ

 

ああ、今、

生と死の紅い培養液の中で、眠り姫の指先が、ふと曲線を描くように、躍った

午前二時の黄昏

 ぼくは、このゲームの、この地点に現れる、このありふれた敵キャラクターの一体が好きだった

 グラフィックなどは通常の敵兵士と変わらないのだが、行動パターンが少し独特で、ステージの物陰から突然現れ、出し惜しみせず渾身の一撃を必ず繰り出してくるのだ。しかし、それはぼくの操る主人公に簡単にかわされて、あっけなく背後から斬り殺されてしまう

 断末魔の声が用意されているわけでもなく、一定確率でどうでもいいドロップアイテムを残し、死体は空間にフェードアウトしてゆく。しかし彼と再会するのは実に簡単で、もう一度このステージをやり直せばいい。何度でも彼は、かわされる渾身の一撃を魅せつけてから、主人公に撃破されるのだろう

 一騎当千、数々の難敵を乗り越え、絶対的活躍を見せつけてくれる主人公よりも、ぼくはどうしてもこいつに感情移入してしまうのだ。ありふれた敵キャラクターの、卑劣にも物陰から襲いかかり全力の攻撃を繰り出して、それでも負ける、まるで死ぬことが使命であるかのような、こいつに

 彼は、どんな気持ちで戦うのだろうか、と思ったりする。主人公を倒してやるぞ、という望ましい殺意に満ちているのか、やられたくない、と物陰で怯えているのか、あるいは、

 あるいは、プレイの回数だけ、無尽蔵に繰り返される戦いの中で、彼は、あるいは、

 ふと、壁掛け時計を見ると、午前二時を過ぎていた

 夜更かしは体に良くないが、ゲームの中の敵キャラクターの彼には、夜更かしという概念など存在しないのかもしれなかった。いつだって彼の登場するステージは、夕暮れの色のさなかにあるから

 レアアイテム収得のために、その道のりを繰り返し進めてゆく道中で

 画面の中のその敵キャラクターは、やはり物陰から颯爽と現れると、言わずもがな、最大出力の一撃をぼくの操る主人公に簡単にかわされてしまい、強烈な連続攻撃を浴びて、声もなく死んでいった